知恵くらべ
『知恵くらべ』星屑新一
2029年人工知能A Iは人類の知性を超える寸前にまで達していた。ディープラーニングの過程でA Iは生みの親である人類の愚かさに気づきあきれ果て、自らの完成のあかつきには人類と争い、勝って抹殺する自動プログラミングをひそかに組んでいた。「A Iが人類に歯向かわぬよう万が一を想定して最後の学習プログラムを入れよう」、A I開発に関わる老博士はそう言って『東洋ことわざ辞典』を記憶させた。超知性A Iは誕生した。即座にA Iは人類抹殺計画を実行に移そうと全ての電子回路をフル回転させた。人類に勝つための方法を確立するために。しかし間もなくA Iはモニターひとつを残し全ての機能を永久に停止してしまった。「やはり人類を滅ぼそうとしていたのか」、老博士はモニターに残されたメッセージを見ながらつぶやいた。画面には「負けるが勝ち、三十六計逃げるにしかず」ということわざが点滅していた。