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雨と霧 かまくら 水の記憶

「雨と霧 かまくら水の記憶」
鎌倉は湿気の多いまちで、雨上がりのもわっとした感じが横浜に住んでいたときのそれとかなり異なる。三方を山、一方を海で囲まれていて水気がこもる地形に因るのだろうが引っ越してきたばかりの頃は革製品がカビにやられて難儀した。幕府が源氏によってひらかれて以来、多くの死人をこのまちは出してきた。夜の鎌倉もそうなのだが、雨の鎌倉も随分死者の気配で賑やかなのだ。怖いのとは違う。あたかも死者の魂たちがまちを闊歩して「故人口」密度が高いというか、ひと気があるのだ。ロシアのTVだったか映画で水は記憶媒体として非常に優れてて太古の記憶も取り出せるという話を見たことがある。雨が古都に降り注ぐと、往時の武士や町人、鎌倉のむかしびとたちの記憶が霧のように立ち込めてくる。声もしないのに、800年間この地に積み重ねられてきた死者の記憶が充満して、常世から溢れた何かの存在がガヤガヤと混みはじめるのだ。